「あれ、今日飲んだっけ?」という老いの恐怖
朝の通勤電車の中で、ふと背筋が凍ることがある。
「今朝、血圧の薬、飲んだか?」
記憶を辿ろうとするが、毎日のルーチンすぎて、昨日の記憶と混ざっている。「飲んだ気もするし、飲んでない気もする」。
家に帰ってシートを確認すればいいが、もし飲んでいなかったら一日中高血圧状態で過ごすことになる。逆に、飲んだのにもう一度飲んでしまったら(過量摂取)、それはそれで怖い。
医者には「毎日決まった時間に飲んでくださいね」と軽く言われるが、働き盛りの40代にとって、この「毎日必ず」がどれだけハードルが高いか。
飲み忘れが続くと、次の診察で数値が悪化し、薬の量が増やされる(=医療費が上がる)。これは経済的な死活問題だ。
俺はこれまで、100均のピルケースやスマホのアラームなど色々試したが、どれも続かなかった。
最終的にたどり着いたのは、「生活動線の中に『罠』を仕掛ける」というアナログな方法だった。
100均のピルケースが失敗する理由
「月・火・水…」と書かれたケースに薬を分ける。最初はやる。
だが、週末に詰め替える作業が面倒くさすぎて、そのうち「シートのまま」机に置くようになる。そして飲み忘れる。
ピルケースの問題点は、「薬を飲むために、わざわざケースを手に取る」という能動的な動作が必要なことだ。
ズボラな俺たちに必要なのは、嫌でも視界に入り、触らざるを得ない場所に置くことだ。
俺流:絶対に忘れない「配置」のハック
1. スマホの充電ケーブルに巻きつける
朝起きて、最初に触るものは何か? 間違いなくスマホだ。
俺は、寝室のサイドテーブルにある充電器のケーブルの上に、翌日飲む分の薬(シートをハサミで切ったもの)をクリップで挟んでいる。
スマホを手に取るには、邪魔な薬をどかさなければならない。
「邪魔だ」と思った瞬間に、「あ、薬か」と認識する。水なしで飲めるタイプの薬なら、その場で飲んで二度寝すればいい。
2. コーヒーメーカーの「給水タンク」の中に入れる
もし朝コーヒーを飲む習慣があるなら、これが最強だ。
給水タンクの中(あるいはフタの上)に薬を置いておく。
コーヒーを淹れるには、必ず薬を手に取らなければならない。
「コーヒーを飲む=薬を飲む」という条件反射(パブロフの犬)を作ってしまうのだ。
※もちろん、衛生面を考えてシートのまま置くこと。
3. 油性ペンでシートに「日付」を書く
これが最も原始的で、効果がある。
薬局でもらったシート(10錠や14錠のやつ)に、油性マジックでデカデカと「12/1」「12/2」…と日付を書き込む。
これをやると、「今日飲んだっけ?」と迷った時、シートを見れば一発で分かる。
「12/5の分が無い=飲んだ」という確証が得られるだけで、通勤中の不安は消滅する。
飲んだ後の「ゴミ」はすぐに捨てない
飲み終わった薬の空シート(殻)。これをすぐにゴミ箱に捨ててはいけない。
俺は、キッチンの特定の場所に「今日の生贄(いけにえ)置き場」を作っている。
その日に飲んだ空シートを、帰宅するまでそこに置いておく。
ふとした時にそれを見て「よし、今日のノルマは達成している」と確認するためだ。
これをやることで、飲み忘れだけでなく「飲みすぎ(重複服用)」も防げる。
薬を飲むのは「生きるため」だ
面倒くさい。薬なんて飲みたくない。
だが、俺たちの血管はもう若くない。薬は、壊れかけた体を補強する「メンテナンスパーツ」だ。
>>「要再検査」の封筒が届いた日の絶望と、再検査に行くまでの恐怖を吐き出す
飲み忘れを防ぐことは、将来の入院リスク(=莫大な損失)を防ぐ投資でもある。
さて、家ではこれで完璧だが、問題は「出張」や「旅行」の時だ。
シートごと持って行くと角が刺さるし、ハサミで切るのも面倒くさい。次回は、俺が見つけた「シンデレラフィット」な携帯ケースの話をしよう。

